【夢21 2011年1月号】記事掲載!


yume21.gif
yume21-kiji.gif

糖尿病性腎症が回復し透析いらずになる人が多いと医師もすすめる「内臓トレーニング」

糖尿病の合併症の一つに、糖尿病性腎症があります。
腎臓は血液をろ過する臓器ですが、その中でも最も重要な器官である糸球体には、毛細血管が密集しています。
糖尿病が進んで毛細血管が障害を受けると、糸球体の機能も低下して腎症を発症するのです。
 このような糖尿病性腎症の予防と改善に役立つ方法として注目されているのが、内臓トレーニングです。
(社団法人 内臓トレーニング協会の望月みや子氏が開発した)。
 腎症の改善は、クレアチニン値を目安にしています。クレアチニンは、たんぱく質が代謝(体内で行われる化学反応)されてできる最終産物ですが、腎臓の糸球体でろ過されて、そのほとんどが尿中に排泄されるはずのものです。ところが、腎臓の働きが低下すると、血液中のクレアチニン値が上昇します。
 2006年からのデータでは、内臓トレーニングを行った人の57.7%のクレアチニン値が改善しています。また、クレアチニン値も腎症も悪化しなかった人が14.1%います。内蔵トレーニングを行うと、70%以上で悪化が防げていると見ることができるでしょう。
 腎臓の働きが低下して人工透析をすすめられていたような人でも、透析を受けずにすむようなこともあります。透析を始めた人も、内臓トレーニングで腎機能が改善し、透析の回数を減らすことができた例もあります。

ふくらはぎや足の裏を刺激する

 内臓トレーニングは、内臓トレーニング用に開発された専用の電気治療器を使用します。この治療器は、縦横それぞれ30センチ、厚さ5センチほどで、家庭用の体重計のような大きさです。この治療器を利用して、以下の3つの治療を行うのです。
①ふくらはぎ刺激
あおむけになって両足のふくらはぎを治療器の上に載せたら、微弱な電流を流して刺激します。1回につき30分の刺激を行いますが、これによって5000歩歩いたのと同じふくらはぎの筋肉運動効果が得られます。ふくらはぎを中心に、全身の血液とリンパ液の流れがよくなり、体温が平均0.5度上昇します。
②足の裏の刺激
足の裏を治療器に載せて微弱な電流を流し、足裏を刺激します。足の裏には全身を整える湧泉などの優れたツボがあるほか、内蔵の状況を反映する反射区療法という考え方があります。
 反射区とは、ツボとは異なり、内臓などの各器官につながる神経が集中しているところで、この反射区を刺激すると、神経反射という作用によって各臓器が刺激され、それぞれが活性化すると考えられています。
 当クリニックでは、足の裏にある消化器、呼吸器、循環器、自律神経、生殖器、耳鼻咽喉系、免疫など、10の反射区を刺激します。
③脊髄通電
 治療器から出た2本のリード線の先端についている電極を、首の後ろと背骨の特定部位に貼りつけたら、通電して刺激します。これによって、自律神経(意思とは無関係に血管や内臓などの働きを支配する神経)を調節します。
 ふくらはぎ刺激はあおむけで行います。夜寝る前や朝起きる前に行うといいでしょう。足裏の刺激と脊髄通電は、横になったままでもイスに座ったままでも行えます。

血流がよくなり腎機能が改善する

 先に述べたように、糖尿病性腎症は、腎臓の糸球体にある血管が障害を受けて起こります。これは、糸球体の血管が細くなったりつまったり、また、血液がドロドロになったり老廃物が付着したりして、糸球体の血流が著しく低下した状態です。
 内臓トレーニングのふくらはぎ刺激を行うと、低下した全身の血流を高めることができます。その結果、腎臓の糸球体の血液循環もよくなり、腎機能向上につながります。
 足の裏刺激は、反射区を刺激することによって全身の重要な臓器の働きを高めます。
 脊髄通電は、自律神経の状態を調整します。自律神経には体を活動的にする交感神経と体を休息させる副交感神経とがあり、体はどちらかが優位になって、活動状態になったり休息状態になったりしています。
 ところが、現代人は交感神経と副交感神経のそれぞれを優位にするスイッチの切り替えがうまくいかない人が増えています。交感神経の優位が続いている人は、いつも心身を緊張させ、不眠や不安などに悩まされます。反対に、いつも副交感神経の優位が続いている人も、心身の不調に悩まされています。
 脊髄通電は、こうした自律神経のバランスを整えて、心身の健康を回復します。
 内臓トレーニングを行って、糖尿病の改善が得られた患者さんの症例を紹介しましょう。ヘモグロビンA1c(直近1~2ヶ月の血糖値のコントロールを示す値)を目安にしています。
  糖尿病性腎症の70代の男性のヘモグロビンA1cは、6.2%でしたが、内臓トレーニングを2ヶ月続けて5.6%に改善。インスリン(血糖値を下げるホルモン)を使用していた糖尿病性腎症の70代男性は、2ヶ月で6.9%から4.9%に改善しました。腎症は発症していないものの、重い糖尿病の60代の男性の場合は、9.6%でしたが、内臓トレーニングを受けたところ、1ヶ月ごとに9.2%、8.0%、7.2%、6.8%、6.7%と改善しました。
 内臓トレーニングは、これまでの糖尿病や糖尿病性腎症の治療に置き換えられるものではありません。食事と運動による治療をきちんと行い、従来の薬物治療を受けながら、補完代替医療の一つとして行えば、食事、運動、薬物の治療効果を一段と高めることができると考えています。
 なお、糖尿病性腎症以外の腎臓疾患や、神経性疾患にも効果を上げています。