【財界 2013年3月12日号】記事掲載!

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クリニックと連携して、糖尿病や腎臓病患者の透析に
入るまでの期間を延長し、国の医療費削減に貢献

北海道~沖縄まで全国から来院

 「クリニックの予約は2カ月先まで一杯で、この4月から1日の診察患者数を4人に増やすことになりました」と、静岡トレーニングクリニック(廣岡孝院長)の内臓トレーニング治療の普及活動を支援する内臓トレーニング協会の望月理事長は語る。来院者は北海道から沖縄の石垣島まで全国から。その多くは主治医から腎臓透析の宣告を受けた人たちで、中には透析治療を受けている患者もいる。その他、パーキンソン病や脳梗塞、アトピー性皮膚炎の難病患者も家族に伴われ来院しているという。
 その理由は、クリニックで診断を受け、独自の「内臓トレーニング」を3~4時間かけて体験し、帰宅してから患者自身が、毎日トレーニングを3時間以上続けるという。その結果、腎臓病患者の場合は、けっして下がらないといわれているクレアチニンの数値を下げているからだ。透析間近と宣告された患者は透析へ入るまでの期間が延びたり、静脈瘤が解消したりと腎臓病患者のQOLが向上する。中には、「主治医にあなたの病気は一生治らないと言われ、うつ状態でやってきた患者さんが、内臓トレーニングを根気よく続けたことにより、初めてクレアチニンの数値が下がったと、驚きと喜びの連絡をくれる」(望月理事長)という。

ふくらはぎを刺激し血流活発化

 この「内臓トレーニング」は、治療院を経営していた望月みや子氏が、10年ほど前から研究開発し、体系化した健康法である。具体的には、ふくらはぎ、足の裏、脊髄を刺激し、血液・リンパの流れを活性化し、自律神経のバランスを整えて内臓の機能を正常化する。つまり、人間が生まれながらに持っている自然治癒力を高め、病気に罹りにくい身体をつくることを目指す、いわゆる東洋医学と西洋医学を統合した健康法である。それでは、どのようにして約60兆といわれる人間の細胞の隅々に新鮮な血液とリンパを届け、細胞の排出した二酸化炭素と老廃物を回収してくるか。開発者のみや子氏は、昔から“第2の心臓”と言われるふくらはぎに着目し、ふくらはぎや足裏、脊髄の刺激(トレーニング)を行い、血流改善を行う独自の健康法を編みだした。
 「運動によって“第2の心臓”を活発に動かすことが理想ですが、腎臓病の患者さんは糖尿病と違い運動を主治医から制限されているケースが多い。自宅にいながら、補助器具で寝ながらでもトレーニングが出来るのがこの健康法の特徴です」(同)。開発には1957年に東京大学医学部の田坂定高教授が開発し、大きな治療結果が出たにもかかわらず普及しなかった「低周波脊髄・頭部通電療法」の論文を国会図書館で閲覧し、参考にしたという。内臓トレーニングを頼って全国からやってくる難病患者の喜ぶ姿を見て、腎臓病など難病に苦しむ患者のQOLを少しでも向上できれば社会貢献になると思い、望月理事長の提案で(社)内臓トレーニング協会を2008年12月1日に現本部に設立した。

透析費で財政が困窮する街も

 試行錯誤のうえ開発された「内臓トレーニング」であるが、腎臓病患者や難病患者のQOLが改善するにつれ、医学界から高い関心を示す医者が徐々に増えていった。その1人が名古屋市在住の医学博士である廣岡孝氏だ。廣岡氏は、「私は人間ドックや健康診断、がん検診などに、なぜ医療保険が適用されないのか疑問を感じていました。そんな時『内臓トレーニング』に出会い、これは西洋医学と東洋医学を合体した統合医療であること、難病患者さんの症状改善に有効であることを知り、積極的に勧めるようになりました」と語る。先生は、内臓トレーニングによる治療を専門とする「静岡トレーニングクリニック」を2009年4月に開院した。
 同クリニックでは、毎週水・金曜日の午前9時と午後1時から完全予約制の治療(診察料は自由診療で3万円)を行っている。また、内臓トレーニングを体験できる「健康教室」を毎週月・火・木曜日に開催している。(参加料は税込1万500円)。体験後は、患者自身がトレーニングを行うことになるが、同協会のトレーナーが電話などでキメ細かくフォローしていく態勢をとっている。自宅でのトレーニングに入ると同クリニックが用意した「実践記録」に、トレーニングの内容とそれによる体調や症状の変化、心境などを記録して、2週間から1カ月の間隔で報告することになっている。この「実践記録」は、協会のホームページにも一部が紹介されているほどだ。ここに、クリニックで治療を受け、自らが自宅で病気をケアし、医師の指導のもと、協会が患者を支援するという、生活習慣病患者の新しい治療支援体制を作り上げた。
 日本腎臓学会及び日本透析医学学会の調べでは、慢性腎臓病1,330万人(10年)、新規の透析患者約3.7万人(11年)、全透析患者数は30.4万人(11年)を超えるという。しかも一人当たりの透析費用は年間500万円。この治療費の約9割を国や地方自治体、健康保険組合が負担し、財政規模が小さい市町村では、透析費用の負担が社会問題化している地域もある。国の医療費削減の面からも、同クリニックと同協会の今後の動向が注目される。