腎臓病を知る

腎臓の働き

腎臓の構造

腎臓は、そらまめのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のやや上に左右ほぼ対称に2個あります。ネフロンと呼ばれる機能単位が約100万個で1つの腎臓を構成しています。腎臓には、心臓から送りだされる血液の約20%が流れ込んでいて、心臓や脳を超えるもっとも血液の流れる量が多い臓器です。

jinzou_kouzou

血液はネフロンの中の糸球体(毛細血管が糸くずのかたまりのようになっている)に入り赤血球やタンパク質など大きな物質以外の老廃物(尿素窒素、尿酸、クレアチニン)や水分、ミネラル(ナトリウム、カリウム、リン、カルシウムなどの水に溶ける物質)などを無選択にろ過しています。ろ過された物質がそのまま尿になるわけではなく、糸球体の先の尿細管で体に必要な栄養や水分が再吸収されています。

 

老廃物の排出

nyou腎臓は血液を濾過して代謝産物(クレアチニン)や老廃物(尿素窒素、尿酸など)や塩分を尿として体の外へ排出してくれます。機能が低下してくると老廃物や余分な水分が体内にたまり、むくみが出たり、体がだるくなります。さらに毒素が排出できなくなると、吐き気や頭痛、食欲不振などの尿毒症を起こします。末期には、心不全や肺水腫などの合併症を起こし、生命の危機に陥ってしまいます。

 

血圧の調節

ketuatu腎臓は人体機能を維持するために、心臓から送り出される血液の20%強もの供給を受けている臓器で血圧と密接な関係があります。通常は血圧を安定させるため、体内の水分と塩分量を調整しています。しかし、腎臓病になると血圧が高くなるような働きをしてしまうのです。

腎臓の機能が低下してくるとレニンと呼ばれる酵素の分泌量が増えます。このレニンは血液中のタンパク質に働きかけアンジオテンシンとよばれるポリペプチドを作ります。この物質は血管を収縮させるので血圧が高くなるのです。高血圧は慢性病の温床で腎臓だけでなくほかの臓器や血管に負担をかけてしまいます。

 

造血作用

zouketu腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)が骨髄に働きかけ、血液中の赤血球の生産を促します。腎臓の働きが悪くなるとこのホルモンが出てこなくなってしまうため、血液が十分につくられず貧血になります。貧血になると疲れやすい、食欲不振、頭痛、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみなどの症状が出てきます。腎臓病の方の貧血は腎性貧血とよばれ、鉄分が不足している貧血とは性質が異なります。

 

水分調節

balance体の水分や電解質(ナトリウム、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウムなど)は不可欠なものですが、多すぎても少なすぎても悪影響がでます。腎臓はそれらの量を調節することで、体内環境のバランスを保っています。腎臓は、1日におよそ150~180ℓの水分をろ過していますが、その99%は再吸収され、残り1%の1.5ℓ前後が尿として排出されます。

機能が低下して体液量の調節がうまくいかなくなると、体がむくんでしまいます。また、イオンバランスがくずれると、疲れやめまいなど、体にさまざまな不調が現れます。ナトリウムは血圧、カリウムは心臓、リンは骨、カルシウムは血管壁、マグネシウムは筋肉や神経などに多大な影響を与えます。

 

骨の強化

hone

骨の発育には複数の臓器が関わっていますが、その中でも腎臓は、カルシウムを体内に吸収させるのに必要な活性型ビタミンDをつくっています。腎臓の働きが悪くなると活性型ビタミンDが低下し、カルシウムが吸収されなくなって骨が弱くなる骨粗しょう症などの症状が出てきます。

 

 腎臓病の種類

慢性腎臓病・腎不全

腎臓の働きが衰えてくると、一般に慢性腎臓病とか慢性腎不全と診断されます。しかし、この名称は「腎臓の機能が衰えてきていますよ」と腎臓の働きの状態を表した病名で、いわゆる警告のための名称と考えるとわかりやすいでしょう。

shindanですから、腎臓のどの機能が衰えてきているのか、腎臓のどの部分が壊れているのか、病気の原因がどこにあるかを指摘した名称ではありません。近年は、医学の進歩により、壊れた部位(原疾患)やその症状から腎臓病を的確に表現する病名が付けられるようになってきました。まだ、原因が分らない腎臓病もありますが、現在、日本透析医学会が発表している腎臓病の原疾患数は20種類に達しています。

⇒実践者の声(慢性腎臓病・腎不全)

 

糖尿病性腎症

日本人は、遺伝性のⅠ型糖尿病が10%と少なく、Ⅱ型糖尿病が90%となっています。現代日本の豊かな食生活と運動不足の生活により、糖尿病患者の数は年々増加し、日本の糖尿病の患者数は316万6,000人、(「平成26年患者調査の概況」厚生労働省)予備軍は1,100万人を超えます。(「平成24年国民健康・栄養調査」厚生労働省)

tou-jin

糖尿病は、血液中に糖が残ってしまうため、血液はドロドロ、血管はボロボロになり、全身の血流が滞ってきます。このため、目には網膜症、神経の細胞も破壊されて手足に痺れやむくみなどが発症してきます。腎臓も、毛細血管の塊である糸球体が破壊されて、老廃物の濾過ができなくなり、高血圧やタンパク尿が発症し、やがてはネフローゼ症候群となるなど、他の腎臓病に比べてその進行が早いことが特徴です。

また、血流の滞りから血管がもろくなり、血管が透析に耐えられなくなる前にシャント手術をすることにより、腎臓病だけの患者よりも早めに透析に入ることになります。このため、近年は、毎年、透析導入される患者のうち、糖尿病性腎症の患者が43%でトップとなっています。

⇒実践者の声(糖尿病性腎症)

IℊA腎症

iga糸球体という器官が壊れる病気の一つです。糸球体に免疫グロブリンのIgAというタンパク質が沈着して発症します。自覚症状はありませんが、病気が進行すると尿タンパクや血尿が出て、食欲不振、疲れやすい、だるいなどの症状が出てきます。

腎臓病は比較的高齢者の病気ですが、この病気は10代の若い人も多くなっています。近年、ステロイドパルス療法や扁桃腺摘出手術が有効と言われています。

⇒実践者の声(IgA腎症)

慢性糸球体腎炎

糸球体という器官が壊れる病気の総称です。腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の集まった器官があります。これは全身から老廃物を運んできた血液を濾過する役目を持っています。この糸球体が壊れると体内に再吸収されるはずのタンパク質が尿の中に流れ出て、いわゆるタンパク尿や血尿が出るようになります。この時点では、クレアチニン値は基準値内ですが、すでに腎機能の低下は始まっています。
jinennただ、自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることが多くなっています。病気が進行するとむくみやだるさ、疲れやすい、食欲不振などの症状が出てきます。

⇒実践者の声(慢性糸球体腎炎)

腎硬化症

長い間、高血圧を放置しておくと血管が硬くなる動脈硬化になります。腎臓の毛細血管で動脈硬化が起きると組織が破壊されて機能低下するのが腎硬化症です。初期は自覚症状がありませんが、症状が進むと高血圧、動脈硬化、むくみ、倦怠感、貧血、息切れなど腎臓病に共通する症状が出ます。

⇒実践者の声(腎硬化症)

ネフローゼ症候群

糸球体基底膜が壊れることによって、尿に大量のタンパク質が流れ出し、血液中のタンパク質が減少し、むくみやコレステロールなどの脂質が増える病気です。原因は多々あり、糖尿病性腎症や膠原病などが原因のこともあります。

症状としては、尿が出にくくなり、顔や手足のむくみ、胸や腹部に水が溜まったりします。また、血液中に脂肪が溢れるので血液が固まりやすく免疫力が落ちて感染症に罹りやすくなります。

⇒実践者の声(ネフローゼ症候群)

多発性のう胞腎

遺伝性があり、腎臓にのう胞(水がたまった袋)ができる病気です。その数が増え、袋が大きくなっていき、腎臓を圧迫して腎臓機能を低下させます。アルブミンなど血液中のタンパク質の濃度が低下することによって血液中の脂肪が増え、その結果感染症にかかりやすくなります。

初期は自覚症状がありませんが、症状が進むと高血圧、食欲不振、疲れやすくだるいなどの症状が出てきます。また、のう胞が大きくなってくると腹部が膨らみ、圧迫感を感じるようになります。

⇒実践者の声(多発性のう胞腎)

腎臓病の症状

 

自覚症状がない

mushoujou腎臓病は末期になるまで自覚症状が出にくいため、体調に変化を感じて受診した時には、かなりクレアチニン値が高かったということがよくあるようです。

健康教室に参加される方の様子を見ると、何かしらの症状は出ているのですが、じわじわと進行する病気なので気がついていない人がほとんどです。高熱が出たり痛みが出るのとは違い、生活に支障が出るほどの症状ではないので、血液検査の数値で腎臓の状態を把握していくことが大切です。

 

高血圧

ketsuatsu腎臓には血圧を調整するという役割があり、腎臓病になると調整がうまくできなくなります。そのため高血圧になり、まず降圧剤を処方される方が多いようです。また他の原因で血圧が上がり、腎臓病になった方もいます。
毛細血管の塊である腎臓は、高血圧に耐えられないということで、血圧を下げる治療が行われるのが一般的です。ただ、血圧は血液を循環させるために必要な圧力なので、下げすぎても良くありません。薬が適量か、効きすぎていないか、自分で血圧のチェックをすることが必要です。

 

疲れやすさ・だるさ

tsukare尿検査でタンパクが多く漏れていると、体を維持するだけの栄養が不足して、だるさを感じることがあります。また、腎臓が調整している電解質のバランスがくずれると、疲れなどの不調が現れます。
一番よくないのは、血液中に毒素である尿素窒素が増えることです。汚れた血液が全身を巡るので、他の臓器にも影響が出て体力の低下を感じるようです。

 

むくみ

mukumi腎臓の機能が低下して体液量の調節がうまくいかなくなると、体がむくんでしまいます。特に足から症状が出る方が多いのですが、下半身に溜まった水分を上半身に上げることができず起こりますので、血液循環が上手くできていないという証拠です。重篤になると、肺や心臓にまで水が溜まってしまいます。

 

痛風

tufu_soft血液中の尿酸量が多くなると、溶けきれないものが結晶化してしまいます。結晶が大きくなると血管を詰まらせる原因になり、毛細血管の固まりである腎臓では目詰まりを起こし、機能低下を速めてしまいます。

足の指や足首、膝などの関節に結晶が溜まると、激しい痛みを伴う痛風発作が起きます。その名の通り「風が当たっても痛い」と表現されるほどの痛みなので、皆さん病院に駆け込みます。抗炎症剤や鎮痛剤が処方されるので症状は治まりますが、この薬が腎臓に大きなダメージを与えてしまいます。

 

尿毒症

kayumi腎臓の毒素排出機能が衰えると、血液中に尿毒素、つまりタンパクの残りカスである尿素窒素やそのほか様々な毒素が残ってしまいます。「尿毒素」が身体中に溜まってしまうと、細胞・臓器が正常に働けなくなり、最終的には生命の危機に陥ります。

初期症状としては、「疲れやすい」「だるい」「思考力の低下」「むくみ・浮腫」などが挙げられます。症状が進むと消化器系、神経系、循環器系の臓器や、筋肉、皮膚にまで、要するに全身に症状が出てきます。この段階になると、透析の導入が検討されます。

 

骨粗しょう症

hone腎臓はビタミンDの活性化など体内のカルシウムバランスの維持に大きく関わっているため、症状の進行とともに骨障害も増加します。

特に透析患者では約30%の人に骨障害の症状がみられるというデータがあります。

 

結石

kesseki腎臓などにできるシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムなどのかたまりのことです。腎臓から細い尿管へ移動すると(尿管結石)、激しい激痛がおこります。

ただ、結石が腎臓にある間はほとんど痛みがないので、注意が必要です。結石が大きくなると腎臓障害や排尿障害が起こるため、尿がすっきり出ない感じがしたり、残尿感があっったり、血尿が出ることがあります。

内臓トレーニングってなに?