肺の生活習慣病COPD 大半が喫煙者 まずは禁煙を
あまり知られていないが五月九日は「呼吸の日」。肺の生活習慣病といわれる慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の存在を知ってもらおうと日本呼吸器学会が昨年定めた。タバコが主な原因で、肺の機能低下が進み、進行すると寝たきりや心不全になる。早期発見・治療が大切だが、医療現場での認知度も低くほかの病気と間違われることもある。
都内で会社を経営するKさん(72)は昨夏、朝方にせきやたんがひどくなった。重い物を持って歩くと息切れがひどく、妻との散歩では速さについていけない。近くの診療所にかかるとぜんそくと言われたが、三ヶ月たってもいっこうに良くならない。ほかの病院で詳しく診てもらったところ、ぜんそくではなくCOPDと診断された。
COPDの患者の大半が喫煙者。鼻や口から吸い込んだたばこの煙によって気管支や肺胞に慢性的な炎症が起こる。ゆっくりと肺がすかすかになるように劣化していき、機能も低下する。一度壊れた肺胞はもとに戻ることはない。
主な症状はせきやたん、息切れ。昼間に症状が出るのが特徴だが、重症になると昼夜を問わず息苦しく、せきやたんがたくさん出る。高齢者だと心臓への負担が増し、心不全などを起こしてしまうこともある。
診断は難しく、Kさんのようにアレルギーが原因のぜんそくなどと間違って診断されることもある。詳しく調べる際は「スパイロメーター」で肺機能を見る。さらにX線や心電図検査でほかの病気の可能性を消去法で検討していき、確定診断する。
治療の基本はまず、たばこをやめる。症状の進行は止まる。吸入薬などを使って発作を抑える。重症の場合は自宅で酸素吸入する。
治療をせずに放っておくと影響は肺だけにとどまらない。病状の進行とともに低栄養や炎症などから手足の筋肉が低下する。息切れがひどくなり運動量が減る。寝たきりになる場合もある。日本医科大学の木田厚瑞教授は「重症患者以外は安静にするのは間違い。体を動かさないとむしろ悪化する」と指摘する。
患者は糖尿病や高血圧症などをかかえる場合が多い。運動量が落ちればこうした生活習慣病も悪化する。COPD患者の死因の三分の一は狭心症や心筋こうそく。「メタボリック症候群ばかり気にして、関連のあるCOPDの対策が忘れられている」(木田教授)
患者は五百万人いるといわれるが、約八割は症状がまだ軽い。重症患者は1%にすぎない。久留米大学医学部の相沢久道主任教授は「肺の検査や疾病への社会の認知度はまだ低い。重症になる前に専門医を受診してほしい」と話す。
社会への影響は今後大きくなる見通し。世界保健機関(WHO)などが病気を患う期間や障害のある期間の長さから病気の重症度を表した指標「DALY」では、2020年には虚血性心疾患、うつ病、脳血管系疾患に次ぐ疾病になると想定されている。
COPDは患者だけでなく支える家族の負担も大きい。社会の損失を抑える対策が求められている。
日本経済新聞(夕刊) 2008年4月22日(火曜日)