病を知る 睡眠と健康③子供の昼寝

中高生・幼児に間違った習慣
抑うつ・不安の原因に

度な昼寝や仮眠は眠気の解消に効果がある。だが夕方以降に仮眠したり、眠たくないのに昼寝したりすると、夜の寝つきが悪くなり逆効果だ。福島大学共生システム理工学類の福田一彦教授(精神生理学)は「中高生や幼児の多くに間違った仮眠の習慣が根付いている。抑うつや不安の原因にもなるので、改めるべきだ」と呼び掛ける。

──中高生の眠りに大きな問題があると指摘していますね。
 「八年ほど前、中高生約一万人を調べたところ、半数に仮眠の習慣があり、午後五時─九時の遅い時刻に仮眠する子が約三割もいて驚きました。帰宅後、夕食や入浴後に仮眠し、明け方まで起きているようです。夜の睡眠を削り、夕方の仮眠で補っているので『睡眠の分断』ともいえます」
 「進学校の生徒でその傾向が著しい。大手受験産業のパンフレットを見ると、夕方に二時間ほど仮眠し夜中に勉強するスケジュールを推奨さえしています。深夜にゲームやインターネットに興じる中高生もいるのではないでしょうか」
 「調査結果では仮眠を多くとる中高生ほど日中に居眠りしやすく、イライラや抑うつ感、不安が増していました。大学生を対象に睡眠を分断する実験をし、認知力や活動量を調べると、睡眠をまとめてとる時より活動が低下していた。長い仮眠の影響で夜と昼の生物リズムのメリハリが低下すると考えられます」
 ──仮眠では睡眠不足を補えないのですか。
 「短い仮眠は午後二時ごろの眠気に対処するには有効です。しかし、夜の睡眠を削って長い仮眠で補ったり、睡眠を複数回に分けて全体で長い時間を確保したりする戦略、いわゆる“寝だめ”は有効ではありません。大人でも平日に眠れない分を週末にとる人が多くみられますが、寝だめ自体に意味がないばかりか、リズムを乱して月曜日以降の寝起きを悪くするなど、よいことはありません」
 ──受験生はどうしたらよいですか。
 「多少眠くても夕方以降に仮眠しない習慣を身につけることが大事です。いままで仮眠していた人も頑張って起きていれば一週間ほどで順応できるはず。どうしても眠くて勉強がはかどらない人は午後八時、九時ごろに就寝し、朝早く起きて勉強時間を確保するのもよいでしょう」
 ──保育園の昼寝も問題があると訴えていますね。
 「昼寝する幼児は年齢とともに減り、四歳児で三割、五歳児では一割以下になります。しかし、多くの保育園では厚生労働省の指針に従い午後に一時間半─二時間の昼寝を課している。眠たくない子を無理に寝かせるのは問題です」
 「私たちの研究では、昼寝する園児は寝つきが三十分─一時間遅くなり、午前零時すぎまで起きている子もいる。寝不足感や寝起きの気分の悪さを訴える子も多い。四歳児以上のクラスでは、眠れない子供に昼寝の無理強いはやめるべきです。幼児期に外から与えられた睡眠習慣は三、四年間続くので、放置すると小学校中学年まで寝つきの悪さが続く恐れがあり、早い時期に改めたほうがよい」
 ──大人を含め、正しい昼寝や仮眠の知識が広がっていないようですね。
 「睡眠全体について『量への信仰』がみられます。毎日八時間の睡眠が必要だと誤解している人が多いのと同様、仮眠は夜の睡眠不足を補うためにとるのだと思い込んでいる。しかし不適切な仮眠は睡眠の質を悪くします。量の確保だけでなく、リズムを維持し質を高めることが重要です」
(聞き手は編集委員 久保田啓介)


 午後3時前に20−30分目安
 厚生労働省研究班がまとめた「睡眠障害対処の十二の指針」によると、昼寝や仮眠は午後三時前に二十─三十分とるのが望ましいという。それ以上眠ると頭がぼんやりし、夜の睡眠に悪影響を及ぼすからだ。
 福田教授も「睡眠時間が十分でも、昼過ぎには自然な眠気が生じやすい。居眠りによる事故や作業効率の低下を防ぐのが仮眠の本来の役割で、長すぎる仮眠は逆効果」と話す。

平成20年7月1日 日本経済新聞