未承認治療も医師の裁量 ―安全性に不安の声―

日本経済新聞 2011年3月3日

 幹細胞を使った再生医療は期待が高い半面、民間クリニックなどが国の承認なしに再生・幹細胞治療を実施。実態は「野放し」に近いと不安視する声もある。日本再生医療学会理事長の岡野光夫・東京女子医科大学教授は2日記者会見し、「重大事故が起これば21世紀/の主流となる幹細胞治療の正しい発展を妨げかねない」と警告した。

 再生医療を手掛ける海外の病院に患者を仲介する業者の男性は「ALS(筋萎縮性側索硬化症)やパーキンソン病、子どもの脳性まひなど難病患者から問い合わせが多い」と話す。費用は100万円超だが月50人以上が問い合わせてくる。
 「視察した中国では病院が汚く、堕胎した胎児の幹細胞を無断で使っていた」と明かす。安全性や効果にも穎問が残るという。欧州では幹細胞治療に規制当局の承認が必要となる制度を来年導入する。この業者は今年から仲介業路を中止した。

 再生医療などの新しい治療法が広く実施されるには、薬事法に基づき企業などが臨床試験(治験)をして国の承認を得る必要がある。研究段階の治療は大学の研究者らが「臨床研究」を実施するのが一般的。学内の倫理委員会などの承認を得て安全性を厳しく確認しながら進める。人の幹細胞を使う臨床研究は、国の指針の順守も求められる。一方、医師浩では医師の裁量を認めており、未承認の治療法でも医師の判断で実施が可能だ。海外で作られた幹細胞も承認なしに輸入できる。国内の一部の美容整形クリニックは「幹細胞を使った再生医療」をうたい文句に豊胸術やしわ取りなどをしている。 山中伸弥・京都大学教授は「新型万能細胞(・1PS細胞)を使う将来の再生医療実現にもマイナスになる可能性がある」と危惧する。日本再生医療学会は科学的な根拠のない不適切な幹細胞治療などに関与しないよう、会員に勧告を出した。実態調査も検討中だ。

 永井良三・東京大学教授は「夢のような話に患者が踊らされないため、囲もルール作りへ議論を始めるべきだ」と指摘する。推進と規制のバランス確保が必要になる。