患者との会話から学ぶ -納得の医療を求めて(9回目)
安東 満(総合診療医)
静岡新聞 2010.3.19
コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査機器に加え、あらゆる細胞になれる万能細胞「IPS細胞」を利用した遺伝子治療・・・・。
医療に関するニュースを見聞きしていると、医師の私ですら「現代医療=ハイテク医療」
と感じてしまいます。読者の皆さんも同じではないでしょうか。しかし、実態は違います。
医療の誕生と共に生まれたとされる「ローテク」の代表「問診」も着実に進化しているのです。ところが、ハイテク医療と比べるとどうしても地味なため注目されないのです。
私はもともと放射線科医でした。放射線科は、エックス線やMRI,CTなどの検査機器だけでなく、癌や脳腫瘍などを放射線で治療する医療機械も扱います。まさに、ハイテク機器に囲まれた職場です。そんな私が問診をはじめとするコミュニケーション重視の診療に取り組んでいるのはハイテク医療に限界を感じたから。ハイテク機器は確かに便利です。
どんどん進化しているので病気を見つけ、治療する精度も格段に上がっています。
それでも万能ではありません。この連載でも書きましたが具体的な症状はどんなに最新鋭の検査機器であっても見分けられません。病気の多くは患者さんが訴える自覚症状に基づいて判断するしかないのです。
とはいえ、ハイテク医療を完全否定するつもりはありません。今後の医療に不可欠であることは間違いないのです。ただ、ハイテクに頼り切ってはいけません。ローテクとハイテクがバランスを保つことが大切なのです。 -中略―
医療に限らず、日本人はハイテクや新しいものに眼が向きがちです。だからこそ、問診をはじめとしたローテクの大事さを再確認する必要がある。私はそう確信しています。
コメント
すべてのお医者さんがこのような考えのもとに診察してくれると嬉しいですね。
健康教室に参加される皆さんから、「今のお医者さんは患者を見ずにコンピューターばっかり見て診察をする。」とか、「患者の疑問や質問に答えてくれない。」などの意見を聞きます。しかし、私の付き合うお医者さんたちもみんなこんな気持ちを持っております。ただ、現実は、患者さんの数が多すぎて、じっくり患者さんに向き合う時間が取れないと嘆いていました。
また、この先生のようにローテクを重視する姿勢は嬉しいですね。健康教室の参加者の中には、内臓トレーニングの補助器具を見て「本当にこんな器具で○○が治るの。」と、露骨に質問してくる方もおります。難病ということから、最先端の高度な医療機器や最先端の高い薬でなければ治らないと思っているからです。しかし、それらの器具や薬を使っても病気は進行し、治っていない事実があります。
内臓トレーニングは一見ローテクな器具に見えますが、人間の体の仕組みに沿ったトレーニングをすればそれなりの効果を発揮し難病も改善するのです。薬一辺倒の現代医療に対して、動かない体を自分で動かすことによって病気の改善を図る方法は現代医療の盲点を突いているのではないでしょうか。