人工透析にも寿命がある

 透析専門病院のホームページをいくつか見てみたら、「うちの病院は透析の仕方が上手なので患者さんの生存率が高い。」という実績を誇っている病院がいくつもありました。つまり、透析の仕方、ケアの仕方によって患者さんの寿命が変わってくることがわかりました。今回は「心のカウンセリング基金」のホームページから頂いた情報を載せました。参考にしてください。


 人工透析にも寿命  今 充 医師
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  今やわが国は世界一の透析国になっています。現在25万人以上の患者さんが週に3回の血液透析治療を受け、毎年一万人以上の透析者が増えているとのことです。その主な原因として生活習慣病の糖尿病や高血圧症が挙げられます。とくに糖尿尿患者さんによる透析が飛躍的に増えています。言うまでもなく、糖尿病の怖いところはしっかりした自己管理と治療を受けておかないと、いろいろな合併症を起こすことです。とくに10年以上の長さにわたって糖尿病が続き、その上、血糖のコントロールが上手くいかぬ場合は三大合併症として失明の危険を伴う糖尿病性網膜症、末梢神経系や自律神経系が損なわれる糖尿病性神経障害、そして糖尿病性腎症が挙げられます。

ご承知のように、腎臓は体内で食物を栄養として使った後に出る老廃物を排泄することや人体を構成している細胞が生きていくための環境(内部環境)を一定にするためになくてはならぬ臓器です。


 糖尿病性腎症は糖尿病が発見されてから、血糖コントロールがきちんと出来てないと10〜20年経過するとタンパク尿が出てきます。そしてタンパク尿が出はじめてから数年後には血清クレアチニンが上がってきて腎機能障害がさらに悪化してきます。つまり、飛躍的に増えている糖尿病性腎症による人工透析を減らすには血糖コントロールを確実にし、糖尿病の悪化を出来るだけ防ぐことです。糖尿病には大きく分けて先天的と後天的なものがあります。わが国に増えているのは後天的なもので、患者さん自身の日々の食生活の乱れや運動不足などのツケが回ってきて発病し、悪化してきます。それを防ぐには生活習慣の自己管理をきちんとさえすれば良いと言う極めて簡明なことですが、「言うは易く、行うは難し」でしょうか。

 糖尿病性腎症による慢性腎不全に対しては、透析導入基準が定められています。(厚生省科学研究・腎不全医療研究班1991)
その基準に従うのが一般的であり、一番無難なこととも思います。しかし、基準は、あくまでも一般的なものであり、医療は個々人に最適なものは何かによって適応を決めることがベターです。透析は早く始めれば始めるほど安全であるかも知れませんが、物事すべてに寿命があるように人工透析も例外でなく寿命があります。

 透析療法の合併症として

①循環器系:心不全、心筋梗塞、狭心症、不整脈、心嚢炎、動脈硬化、高血   圧、低血圧 

②貧血:腎性貧血、鉄欠乏性貧血 

③血小板機能障害 

④消化性潰瘍・消化管出血 

⑤肝炎:B型、C型 

⑥肺水腫、肺感染症 

⑦後天性腎嚢胞、腎癌

⑧骨・カルシウム・リン代謝障害:繊維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、異所性  石灰化、高リン血症 

⑨透析アミロイド症、手根管症候群、関節滑膜炎、嚢胞性病変、破壊性骨髄   関節症、ミオパチー 

⑩免疫不全 

⑪感染症:結核、真菌感染症、帯状疱疹 

⑫皮膚掻痒症、色素沈着 

⑬シャント閉塞、スチール症候群、シャント部動・静脈瘤、シャント部感染 

⑭CAPD合併症:腹膜炎、カテーテル出口部・トンネル感染、注排液不良・腹  膜機能低下、硬化性被包性腹膜炎 

⑮透析中の合併症:不均衡症候群、悪寒発熱、血圧上昇、血圧低下などが挙  げられています。

   (医学大事典・医学書院)より


 これだけの合併症を見れば恐ろしくて、どなたでも出来れば透析のご厄介になりたくないと思うのは当たり前です。可能な限り患者さん自身の腎臓をなんとか働かすように、キメ細かな治療が施行されるべきです。そのためには患者さん自身、日常生活習慣をより良いものとし、食事療法に徹し、安易に薬を求めず、辛抱の療養に耐えるべきと思いますが如何でしょう。

 透析療法の開始が遅ければ遅いほど透析寿命を延ばし、患者さん自身の寿命も全う出来るのではないでしょうか。