急速進行性糸球体性腎炎(Rapidly progressive glomerulonephritis; RPGN)とは?

? 血尿・蛋白尿・貧血・急速に進行する腎機能障害を呈し、数週から数ヶ月で末期腎不全に至る症候群です。
? 我が国では、急速進行性糸球体腎炎は中高年に多く、特に高齢者が増加しています。
? 早期発見・早期治療が一番大切です。年齢・病期にもよりますが、治療は副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を使用し、透析療法を併用することも多いです。

[定義・概念]
急速進行性糸球体性腎炎とは、
? 数週から数ヶ月で急速に腎不全が進行する。
? 血尿(多くは顕微鏡的血尿、まれに肉眼的血尿)、蛋白尿、赤血球円柱、顆粒円柱等の腎炎性円柱を認める。
という2項目を満たす症候群です。

[疫学]
全年齢層に発症しますが、中高年に多く、特に近年は、後述のPauci-immune型を中心に高齢者の発症が増加しており、問題になっています。

[病因]
根本的な原因は不明ですが、何らかの免疫学的な異常が示唆されています。蛍光抗体法という検査で
Pauci-immune型(蛍光抗体法で何も染まらない):顕微鏡的多発血管炎、Wegner症候群、Churg Strauss症候群等
免疫複合型:ループス腎炎、紫斑病性腎炎、クリオグロブリン腎症等
抗基底膜抗体型:Goodpasture症候群等
の3つのグループに分けられます。
さらに?のPauci-immune型は抗好中球細胞質抗体(Anti-neutrophil cytoplasmic antibody ; ANCA)陽性群と陰性群に分けられます(なおANCAにはp-ANCAとc-ANCAがあります)。
何らかの原因で糸球体係蹄壁が破壊され、血漿成分が漏れ出し、その中にフィブリンの遊走作用でマクロファージがボウマン嚢に遊走し、上皮の増殖を引き起こすと考えられています。

[病理]
半月体形成性糸球体腎炎像をとることがほとんどです。蛍光抗体法の所見により[病因]の項で記述したように分類されます。病気の進行により細胞性半月体→細胞線維性半月体→ 線維性半月体に進行してゆき、不可逆性(治療に反応しない)変化を認めるようになります(図1)。

[臨床症状]
全身倦怠感、微熱、食欲不振等とともに尿量減少、浮腫等が認められるようになります。また病因にもよりますが、腎臓以外の症状として間質性肺炎・肺胞出血・関節痛や多発単神経炎により知覚障害や運動障害を認めたり、皮膚病変を認めることもあります。特徴的な症状はありませんが、顕微鏡的血尿(眼で見たときは赤くありませんが、尿を顕微鏡でみると、通常より多くの赤血球が混じっている状態)はほぼ必発です。

[検査所見]
尿検査:様々な程度の蛋白尿、顕微鏡的血尿または肉眼的血尿、赤血球円柱、白血球円柱、顆粒円柱等の腎炎性円柱を認めます。
血液検査:赤沈亢進、CRP等の炎症反応陽性、貧血
腎機能:高尿素窒素血症、血清クレアチニン上昇、高カリウム血症、代謝性アシドーシス
特殊検査:p-ANCA, c-ANCA, 抗GBM抗体が陽性となる場合があります。またループス腎炎の際に認められる血清学的検査が陽性となることもあります。
腹部X線、腎超音波:腎臓の大きさは正常またはやや腫大、腎臓の皮質は比較的保たれています。
胸部X線、胸部CT:間質性肺炎や肺胞出血を認めることもあります。

[診断]
臨床症状・経過・検査所見から、急速進行性糸球体腎炎を疑った場合、可能ならば速やかに腎生検を行い、確定診断をつけます。

[治療]
急速進行性糸球体腎炎は腎予後のみならず生命予後も極めて悪い腎炎症候群ですが、腎機能障害が軽度な時期に発見・診断し、早期にステロイドパルスを含むステロイド療法や免疫抑制療法を行えば、明らかな予後の改善が期待できます。ただし治療に際しては、感染症発症の有無が予後に大きな影響を及ぼします。その他抗血小板薬や抗凝固薬による多剤併用療法を行います。また症例によっては血漿交換療法を行う場合もあります。

[予後]
急速進行性糸球体腎炎は、約30〜35%の患者さまが経過中に腎死に至り、透析療法が必要となります。また維持透析の患者さまも含め25〜30%の患者さまが死亡されます。死亡原因の約50%が感染症によります。また呼吸器感染症を含め肺合併症(間質性肺炎、肺胞出血)による死亡は約60%です。このように呼吸器系の合併症による死亡率が高く、p-ANCA(特にMPO-ANCA)は高齢者に多く、早期発見・早期治療が大切です。


順天堂大学医学部付属順天堂医院 腎・高血圧内科HPより