増える透析<1> 自己管理 尿タンパク出たら食事療法

 透析治療を受ける人が増え続けている。毎年約一万人の増加ペースで、二〇〇六年末時点で二十六万四千四百七十三人。透析にかかる医療費は総医療費の約4%を占める。さらに「予備軍」とされる慢性腎臓病の人も四百八十万人以上と推計され、厚生労働省も対策に乗り出した。今月は「透析」がテーマ。 (中日新聞 遠藤健司)

 店内に並ぶ低タンパク米や春雨、減塩みそ・しょうゆ…。静岡県富士宮市で斎藤茂樹さん(62)が経営する「富士ヘルス」は、腎臓病患者のための食品店だ。
 自身も、慢性腎不全で十八年間、透析治療を受ける。透析は週三回、一回あたり四、五時間拘束されるため、会社勤めは難しいと考え、透析導入の前に一念発起して食品店を開いた。
 伝えたいのは「早期からの自己管理」の大切さ。客に腎臓の機能低下の図を見せ、熱っぽく説明することもしばしばだ。
 四十一歳のとき、会社の健康診断の尿検査でひっかかった。が、腎臓病は自覚症状がない。「大したことない」と放置した。専門医を訪ねた時には腎機能は大幅に低下していて「透析の覚悟を」と告げられた。でも保存期の食事の大切さを教えられ実践。導入を三年間、先延ばしすることができた。
 透析にかかる医療費は年五百万円ほど。斎藤さんには既に九千万円近い医療費が使われた計算だ。「医療費分、社会に恩返しするためには一人でも透析にさせないことだから」と斎藤さん。
 初期からの食事療法に斎藤さんがこだわるのは、「医師任せ」の怖さをしばしば見聞きするため。患者からの相談の中で「ずっと医者にかかっていたのに、ある日突然、透析を宣告された」という例が少なくない。尿タンパクが出ていても、腎機能を表す血清クレアチニン値が正常範囲だと、医師から「心配ない」と言われることも多いが、専門医でないと、適切な判断ができない場合もある。腎機能はストレスなどの影響で急激に落ちてしまう場合もあるからだ。
 日本腎臓学会でも早期に腎臓の異常を見つけようと、慢性腎臓病という新しい病気の概念を設け啓発を始めている。診療ガイドラインでは、クレアチニン値から検出される腎臓のろ過能力が60%を切った人を同病とし、50%を切ると専門医の受診を勧めている。
 大幸砂田橋クリニック(名古屋市)の前田憲志院長は、腎機能を低下させる危険因子は▽尿タンパク量▽高血圧▽食塩摂取量−などはっきりしていて、食生活の改善や薬物療法で透析導入に歯止めをかけられるという。
 ただし、糖尿病による腎不全患者の増加が示す通り、健康管理は容易ではない。同院では、二十四時間蓄尿検査を実施し、尿タンパク量や食塩量などを毎月データとして患者に示し、保護療法に取り組む。「医師は自己管理の動機づけと、目標となる指針を示す必要がある」と語った。