糖尿病に負けないためには何をする
静岡新聞 2010年8月22日
6人に1人は糖尿病とその予備軍
皆さんが健康の中で一番懸念されているのは、がんと生活習慣病だと思います。生活習慣病の代表選手として糖尿病が挙げられます。「糖尿病列島」という本を書いたジャーナリストもいましたが、平成19年の国民栄養調査によると、糖尿病の人は約890万人です。糖尿病の予備軍を含めますと合計2210万人になります。6人に1人は糖尿病かその前段階と言えます。糖尿病による合併症は生命、社会生活を損ないます。例えば失明に至る網膜症が起こります。失明する人は年間3500人~4000人と言われています。糖尿病は成人になって視力を失う原因として最大のものです。腎臓が著しく悪くなって、人工透析を始めなければいけない人は、年間で約1万4000人まで増えています。累積では約20万人と推定されます。週2、3回、数時間かけて血液をろ過する必要があり、年間700~800万円の医療費がかかります。患者さんへの生活への支障も非常に大きいものです。そのため、腎不全を防ぐことが、糖尿病治療の大きな目的の1つになっています。糖尿病になると壊疽(えそ)で足を切る人もいます。年間約3000人が足を失っています。高齢になって身体障害者になることは非常につらいことです。
他にも狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、手足の末梢神経の感覚障害、自立神経障害を引き起こします。心臓の病気の発症率は糖尿病でない人の2倍、心臓病の死亡率は糖尿病でない人の6倍を超えるということです。軽い糖尿病でも合併症を作り出す力はかなり大きいのです。また、がんやアルツハイマーになる確率も2~数倍と言われています。骨粗しょう症にもなります。つまりは、加齢現象が早く起きるということです。このように糖尿病は怖い病気だと認識されていますが、平成18年から19年の間に340万人も増えました。しかし、治療を受けているのは半数未満だと言われていて、非常にゆゆしい状況です。
予防のために自分の体重を知ろう
糖尿病は血液のブドウ糖の濃度が高い状態です。ブドウ糖の濃度を血糖値と言います。血糖値が高くなるのは、血糖を下げるために働くインスリンというホルモンが力不足になっている状態だからです。血糖が高くても、自覚症状がありません。ここが非常に厄介なところです。しかし無症状であっても血糖値が高いと血管を傷めます。血糖値が非常に高いと、体全体のバランスが崩れて、代謝失調になって、意識障害に至り、急に倒れて命を失うこともあります。すい臓から出る血液中のインスリンは血糖を非常に厳密に調節してくれます。糖尿病の場合は、インスリンの分泌が鈍くなってきます。初期の糖尿病では、空腹時は正常の血糖で、食べた後だけ少し上がります。重症になり、インスリンがほとんど出なくなると一日中、血糖が高いという状況になります。どうして糖尿病になるのでしょうか。遺伝と環境という両方の要因が発祥にかかわります。皆さんの血縁者が糖尿病なら、なりやすいと思ってください。メタボリックシンドロームになると、糖尿病は6倍の確立で起こります。両方がそろえば、糖尿病になる可能性はかなり高くなります。脂肪肝、運動不足になると、インスリンの効きが非常に悪くなります。インスリンを出す能力に遺伝的に少しでも問題があると、あっというまに糖尿病になってしまいます。
糖尿病を予防、悪化させないためには、まず自分の体重について知ってください。肥満、運動不足の筋肉が環境要因として糖尿病の発症を助長しているので、体重が指標となります。「理想体重(キロ)×身長(メートル)×身長(メートル)×22」の数式を参考にしてください。160センチの人で55~56キロが理想体重です。せめて理想の10%プラスぐらいでおさめていただくと、非常に健康管理がしやすいと思います。体重は毎日同じ時間に同じ条件で量るといいでしょう。前の日より増えていたら、前の日の行動を見直してください。続いて軽い食事、事務作業をする人の場合のカロリー量を紹介します。「必要なエネルギー量=理想体重×25キロカロリー」で算出できます。身長160センチの人で1410キロカロリーです。思っているほどエネルギーは必要ありません。また、運動して筋肉を使うことで、細胞の機能が変わり、糖の取り込みが非常によくなります。運動習慣がある人のほうが寿命が長いことが分かっています。運動した時間だけ寿命が延びると思ってもいいかもしれません。がんの予防、再発にも非常に有効です。5分程度歩いたり、おなかを突き出したり、引っ込めたりするだけでも腹筋の運動になり、また笑うだけでも横隔膜の運動になります。
カロリー制限でエイジングケア
糖尿病は加齢病の代表です。年齢を重ねたときに起こる状況を先延ばしにする「エイジングケア」が非常に注目されています。その一番確実な方法が昨年、「サイエンス」という権威のある雑誌に報告されました。それはカロリー制限です。カロリーを3割カットして20年間"成人"したサルを飼うと、カロリー制限のないサルに比べて、生存率が5割以上アップするそうです。カロリー制限のないサルは20年間で5割しか生き残りませんでしたが、カロリー制限したサルは8割も生きていました。しかも糖尿病、がん、心血管病、脳萎縮などが全部少なかったようです。
たくさん食べ、インスリンが多く出て、細胞内へ作用すると、エイジングケアにつながる抗酸化物質(体内を酸化の害から守る物質)を作るのを妨げます。ストレスに強い物質をつくる遺伝子の働きもブロックしてしまいます。皆さんも無駄に食べ、インスリンをたくさん必要とするような生活をしないほうが元気で長生きできるでしょう。




