脊髄損傷マウス、歩行回復

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日本経済新聞 2010年8月17日

奈良先端科学技術大学院大の中島欽一教授と棈松昌彦研究員らは、脊髄を損傷し後ろ足がまひしたマウスを、神経に成長する幹細胞を移植することなどで歩けるまで症状を改善させることに成功した。幹細胞移植と同時に、てんかん治療に使われる薬剤を与えて神経細胞の成長を促した。

新たな再生医療の足がかりになる成果だ。 脊髄損傷 交通事故や高い所からの転落、スポーツでのけがなどが原因で、脳からのびて脊髄の中を通っている太い神経が傷つき、運動障害や感覚障害などが起きる。損傷部位によっては首から下が完全にまひすることもある。国内に10万人以上の患者がおり、年間5千人以上発生しているとのデータがあるが、直接神経を再建する有効な治療法はなく、幹細胞などを用いた再生医療の目標の一つとなっている。米専門誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(電子版)に17日掲載された。脊髄を損傷すると、信号伝達を担う神経回路が切れ、そのままでは元に戻らない。神経のもとになる幹細胞を移植し修復を目指す試みもあるが、幹細胞が神経細胞に成長する確立は1%以下。重症だと回復は難しい。研究チームはてんかん治療薬の「バルプロ酸」に、神経細胞の成長を促す作用があるのを発見した。脊髄損傷後のマウスに神経幹細胞を移植してバルプロ酸を一週間投与したところ、神経幹細胞から神経細胞ができる確立が約20%まで高まった。6週間後には約7割が歩けるまでになった。移植して出来た神経細胞と残っていた神経細胞がつながり、神経ネットワークが再構築されているのも確認できた。脳卒中やパーキンソン病、アルツハイマー病などの治療にも役立つ可能性がある。今後人の神経細胞をマウスに移植して効果を調べ、サルで確かめたうえで患者への臨床応用を目指す。人では拒絶反応が起こらないよう白血球型が患者と同じ新型万能細胞(ips細胞)から神経幹細胞を作り、適切なタイミングで移植する治療法などが考えられるという。ips細胞を世界で初めて作製した山中伸弥・京都大教授は「幹細胞による脊髄損傷治療の有効性向上をもたらす重要な成果」とコメントしている。

協会からのコメント

脊髄損傷の方が3名ほど内臓トレーニングに取り組んでいます。そのうちの一人はまったく感覚のなかった足が床の感触を実感できるようになったり、支えられてはいるが自分で足を前に踏み出すことができるようになっています。この研究が早く人間にも適用できるようになるといいのですが。