女性に多い不眠症
日本経済新聞 2010年8月22日
よく眠れない、という人が多い。米国の統計だと10人に1人が慢性の不眠症で、3人に1人はその経験者だ。男性より女性に多い。不眠症の原因と対策を考えてみよう。人間の眠りには一定のパターンがある。まず10~20分で「深い眠りに落ちた状態」になる。しばらくすると「寝返りをうったり、目玉が動いたりする状態」に。昼間働いていた体のスイッチをリセットするためらしい。健康な眠りはこの組み合わせが約1.5時間ごとに繰り返される。これを妨げる原因がいろいろある。もっとも多いのは体調が悪いとき。その場合、原因に対する治療がいる。ただし病気を治すための薬で睡眠が妨げられることもある。高血圧治療薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬などの一部にそのような副作用がある。市販の風邪薬も要注意だ。最近の睡眠薬は、よく効き、副作用も少ないとされている。しかし、根拠になっているのは短期間(数日~数週間)の調査データで、飲み続けるとどうなるかはよく分かっていない。長く睡眠薬を服用した人たち(平均7.7年間)を調べたら、「めまい」「睡眠障害」「疲労感」「うつ状態」が多くなっていた、というデータが最近、報告された。薬が眠りの基本形を乱すのかもしれない。西洋では睡眠薬の代わりに薬用ハーブが昔から好まれてきた。それらの効果を科学的に検証する調査が相次いで行われたが、結論がはっきりせず、「効いているような気もする」という程度だったらしい。
年をとるにつれ睡眠時間が短くなるのは、昼間の活動量が減るから、と一般に言われている。この点を確かめた調査もあり、運動をしない人に不眠症が多いのは確かなようだ。女性に多い理由についても研究がなされ、妊娠、閉経などでホルモンバランスが変化するためであることが分かってきた。誰にもできる不眠症対策を米国の研究者がまとめた。日中は「週3回以上、運動する」「昼寝をしない」。寝る前は「アルコール、お茶類を飲まない」「服薬をなるべく控える」「いつもと違うことをしない」。そして「同時刻に床に就く」。もし眠れなかったら、いったん寝床から離れ、本を読んだりする。たとえ眠れなくても、貴重な時間を授かったと考えてはどうか。(新潟大学教授 岡田正彦)




