多発性硬化症に応用へ ─ビタミンA誘導体 初期治療に効く可能性─
ビタミンA誘導体の合成物質の薬「AM80」が中枢神経難病の多発性硬化症に効く可能性があることを国立精神・神経センター神経研究所の山村隆部長と大木伸司室長らがマウス実験で示した。
米病理学雑誌6月号に発表したところ、米国で反響があり、多発性硬化症の初期治療への応用に期待が高まった。山村部長は「ぜひ患者に臨床実験を実施して効果を確かめたい」と話している。
多発性硬化症は中枢神経のあちこちで炎症を起こす免疫異常の難病。10~50代で発症し、男性より女性に多い。世界で約250万人、日本で1万数千人、急増している。症状が急に進む急性期はステロイド、慢性期はインターフェロンが基本的な薬だが、治療の選択肢は少ない。
ビタミン類の不足が多発性硬化症にかかわっているという学説が最近浮上している。研究グループは、急性前骨髄球性白血病の治療薬として日本で2005年から使われているビタミンA誘導体のAM80に注目した。
多発性硬化症を起こすようにしたマウスに発症10日前から2日に1回、AM80を与えると、発症が3日遅れ、まひ症状も半分以下に減った。脳の炎症作用や免疫異常もAM80で抑えられていた。
発症して3日後から与えても、足のまひ症状の程度は半分以下にすぐ下がった。ただ、発症後2週間で治まっていく時に効き方は弱まっていた。
山村部長は「薬として実績があるので、臨床実験で効果が分かれば応用は早い。多発性硬化症の初期治療の選択肢になるのではないか」とみる。
AM80を開発した首藤紘一東京大名誉教授は「重要な結果だ。この薬は動物実験からアルツハイマー病にも効果があるとみられる。
いずれも臨床実験で実証が必要だが、多様な病気に使える可能性はある」と期待する。
静岡新聞 2009年6月28日
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