「酢」が助っ人 メタボ改善?  ──1日スプーン1杯目安 血圧降下にも期待 種類・飲み方には注意──

蒸し暑い梅雨時、料理にさっぱり感を与えてくれる調味料が酢だ。人を対象にした比較研究で中高年が悩むメタボリック症候群を改善する効果が期待できそうなことがわかってきた。毎日続けて一定量を取れば、血圧降下にもつながるという。

40歳を目前に下腹がポッコリと出てきた都内在住のAさん。ラーメンを食べる時は食酢をたっぷりかけ、アイスクリームにもイタリア料理で使うバルサミコ酢を垂らし、積極的な酢の摂取を心がけている。始めてから約3週間で体重は500㌘減少、「おなか回りが楽になった気がする」
   紀元前から醸造

酢は酒に酢酸菌などを加えて発酵させて作る。紀元前から醸造の記録が残るほど歴史は古く、米を原料にする「米酢」、ワインから作る「ワインビネガー」、麦芽から作る「モルトビネガー」など世界中にたくさん種類がある。
 酢が体にいいとはよく聞くが、どんな作用があり、どのくらいの量を取ればその作用を引き出せるのか、など不明な点も多かった。
 大手酢メーカーのミツカンは175人を対象に摂取試験を実施した。肥満気味で中性脂肪が高めの人が1日に食酢15㍉㍑を12週間取り続けた場合、飲まなかった人と比べて、腹囲(ウエスト)が1.43㌢㍍減り、内臓脂肪もCT画像でへそ回りを輪切りにした状態で約5平方㌢㍍減少していた。中性脂肪値も改善した。15㍉㍑はスプーン1杯に相当し、酢の主成分である酢酸が750㍉㌘入っている。
 ミツカン中央研究所は酢酸の体内での働きを調べた。酢酸分子がアデノシン3リン酸
(ATP)と呼ぶ代謝エネルギーをAMPと呼ぶ物質に変え、それが運動などによって活性化される分子であるAMPKを働かせていた。活性化したAMPKは脂肪の合成を増やすたんぱく質ができるのを防いだり、脂肪の燃焼を増やすたんぱく質ができたりするのを手助けしていた。
 日本大学医学総合健心センター内科・循環器科の高橋敦彦医長は「メーカー主導の研究データだが、対照群を置き、運動を制限するなど信頼性は高い。本当にメタボリック症候群の改善につながるかどうかはまだ何ともいえないが、酢は薬でもサプリメントでもなく食品なので積極的に取って構わない」と話す。
 酢は血管内の一酸化窒素を増やす働きがあり、血管を拡張することで血圧を下げる効果も期待できる。「降圧剤の代わりになるわけではないが、10週間ほど取り続けると血圧の上の値(収縮期血圧)が10下がるだろう」という。
岡山県立大学保健福祉学部栄養学科の山下広美准教授はネズミを使った実験で酢酸が筋肉の細胞に働きかけて細胞の膜にある糖を取り込むたんぱく質「GLUT4」を2割増やしていることを突き止めた。筋肉で脂肪代謝を促進する「ミオグロビン」というたんぱく質も増加していた。「酢を取ると(糖尿病の原因となる)血糖値を下げることができるかもしれない」と話す。
 メタボリック症候群の改善にとても力強い見方になってくれそうだが、独特なにおいと酸っぱさから苦手な人もいる。どんな酢をどのように摂取すれば、より効果的なのだろうか。
 健康効果は酢の中の酢酸成分にある。最近はリンゴジュースと酢を混ぜたような商品もあるが、この場合は酢酸だけでなくリンゴ酸も含む。「酸っぱくても酢酸ではなく、リンゴ酸やクエン酸のことも多い。一般的には、醸造酢と記載のあるものを選ぶとよい」(山下准教授)
      4~5倍に薄めて
 醸造酢にはラベルに酢酸の濃度を示す「酸度」が表示されている。日本の酢の場合はだいたい4~5%程度だが、なかには6%のものもある。
 ミツカンで酢のおいしい食べ方を研究しているメニュー開発部の管理栄養士、永田めぐみさんに摂取のコツを聞いた。「酢は酸。そのまま飲むとのどや食道粘膜を傷めてしまう。飲むなら4~5倍に薄めてほしい。野菜の酢漬けでも十分な量を取れる。例えばキュウリ30㌘(3分の1本)を半日酢に漬けると、食酢として4~7㍉㍑、1日の目標摂取量の3分の1から2分の1程度を摂取できる」という。
 酢酸は分子構造が安定していて熱でも壊れにくい。加熱調理して独特のつんとしたにおいを取り去ると食べやすくなる。ただ、酢酸の力で脂肪合成を抑えたいなら「食後1~2時間が最も効果的かもしれない」(山下准教授)。
酢酸は胃から素早く吸収されるうえ、脂肪合成酵素は食後1~2時間で増え始めるからだ。
 角砂糖と酢で果物を漬け、炭酸水で割るとさわやかな飲料になるが、飲み過ぎると糖分の取りすぎにつながるので気をつけよう。(吉野真由美)

日本経済新聞 2009年6月28日